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しあわせの時間 [そらいろの軌跡(過去の記録から)]

このお話は前の記事からのつづきです…
http://hana-chacha.blog.so-net.ne.jp/2014-12-29


その方の訪問は、初回から「毎日訪問」となりました。
訪問看護の頻度は、状態と介護力、経済的理由も含めて相談しながら決めていきますが
在宅への準備期間が短かったこと、退院直前にイレウス(腸閉塞)により中心静脈栄養法となったこと、初日から胃管の管理も増えたこともあり、この数日間で身体的状況もかなり変化してきていましたから、落ち着いたら週3日にしたとして少しの間毎日にしましょうか…と提示してみたのです。
状態が不安定でも訪問回数が増えれば経済的負担は大きいですから、緊急時は電話がいつでもかけられるから…となることも多くありますが、やはり不安がいっぱいあるのでしょう…奥さんはそうして欲しいと希望され毎日訪問が始まりました。

症状の確認と変わる症状のケアの指導…
それからご夫婦やご家族の歴史を語って頂いたり…
(どんなに重症でも、いえ重症だからこそ…私は何よりこれが大切だと思っています)

台所のカウンターに飾れている4枚の写真…
どの写真も背の高い本人の身体にぴったりと小さな奥様が寄り添っています。
幸せそうな奥様の笑顔と照れくさそうに笑うシャイなその方の笑顔…
3枚はご夫婦の写真…
もう一枚は笑い声が聞こえてきそうな家族4人の顔がぎゅーっとくっついたまぶしいほどの満面の笑顔の写真…
なんて素敵な写真なんでしょう!
息子さんたちは20代後半…本当に仲のよい家族…
でも、難しい時期もあったのよ…と奥様…
奥様が話すご夫婦のお話をお聴きしながら羨ましがる私をシャイな笑顔のご本人が笑うのでした…。

吐き気はだいぶいいようですね…
痛みが結構強いですね…夜間の睡眠が取れないのはそれがあるかも…。
今回はモルヒネがメインに入っていますがPCA*ポンプは使わず
突出痛のレスキューはアンペックとしていました。
アンペックが3回使われていることを主治医と薬剤師さんに伝えメインを増やしてもらいました。

3日後の日曜日の訪問…
奥様が見せてくれたデジカメの写真には、朝植木に水をやるご本人の姿…
「うわー、すごい…花も喜んでいますね」と言うと
「飼い主がかわいがってあげないとね」と嬉しそうに笑いました…。
家や庭には本当にいろいろな花が咲いています。
「私よりこの人の方が花を育てるのが上手なんですよ。ね、お父さん。」…


膵臓がんの末期…黄疸、腹水、イレウス、痛み…
なのに…こんな優しい時間がありました…
大変な介護の中…奥様からはいつも幸せだったことのお話が…
私の身体をすり抜けてそれはご本人への感謝の言葉…
時間がないことはわかっていました…だからこそそんなお話が大切…

既にいっぱいにうまったスケジュールに入った訪問だったのでいつも伺うのは夕方5時頃…
でもそのおかげで少し余裕を持ってお話ができました…

(つづく…)

PCA (Patient Controlled Analgesia):疼痛患者が自分自身で鎮痛を必要とする時に予め設定されている鎮痛薬を自分で注入する方法

この記事は過去に書いたものを再掲載したものです
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